『失われた場を探してーロストジェネレーションの社会学』M・C・ブリントン
『失われた場を探してーロストジェネレーションの社会学』 メアリー・C・ブリントン著 NTT出版
1990年代後半から、高校卒の就職予定者への指導が困難になってきた。今までの指導にのらないのだ。「糠に釘」というのか、フニャフニャして、しかも親まで子どもの気持ちを大事にしたいといって、フリーターになることを認めるのだ。いやはやどうしようもない。
いったいどうしたことなのだ。豊かさのせいなのか? とすれば・・、どうしようもない。しかし、これでいいはずがない。ズ~と、もやもやしていたのが、この本を読んでだいぶスッキリした。 そして、これは大変な事態が高校卒業段階で起こっていると分かった。 しかし、なぜ日本の研究者にこの本がみたいなのが書けなかったのか?
ともかく第1章~第7章にはそれぞれ終わりにポイントが書かれていて、要約が知りたければそれを読んでください。(でも、それでは不親切なので、少し引用します)。
<第1章のポイント P47> ●日本の社会では、学校→職場→結婚→子育てという「あたりまえ」の人生の道筋に従って生きることがとりわけ強く求められてきた。就職や結婚などの人生の重要イベントを経験すべき「正しい順序」と「適齢期」が、暗黙の社会的ルールによりきまっていたのである。 ●しかし、一九九〇年代以降の景気の冷え込みにより、正社員になれない若い男性の割合が急増(たとえば、若い男性の被雇用者の約三人に一人がパートタイマー)。「あたりまえ」の人生コースを支えてきた土台が崩壊した。 ●雇用情勢の変化によりとくに大きな打撃をうけていたのは非大卒の若い男性であり、若者の間の経済格差が拡大しはじめている。この状況は、若者の晩婚化や少子化の一因にもなっている。しかも格差は、この世代が年齢を重ねるにともなってますます広がりかねない。
<第4章のポイント P122> ●一九九〇年代以降の日本では、高校生の就職市場が極度に冷え込んだ。(高校新卒者の求人倍率は、二〇〇三年には〇.七二倍にまで落ち込んだ)。①日本経済が製造業中心からサービス産業中心に移行したこと ②企業が正社員採用を減らし、非正社員の採用を増やしはじめたこと ③大学進学率が上昇したこと。 ●こうした社会的・経済的変化の重圧で高校新卒者の正社員採用数が減り、高校と企業の実績関係は急激に衰退した。著者が実施した調査によれば、その打撃を特に強く受けているのは、非進学校の普通高校である。このような実態を無視して、正社員にならない若者を非難するのは短絡的だ。 ●著者の調査によれば、高校との実績関係を築く傾向が強いのは製造業の企業。製材がサービス業中心に転換していることを考えると、日本の景気が回復しても実績関係が復活する可能性は小さい。
<関連本>
『教育から職業へのトランジションー若者の就労と進路職業選択の教育社会学』 山内乾史 編 東信堂
役に立つ内容だが、何か白々しく感じられるのは、なぜなのか? おそらく、「第9章 障害者の就労と教育ー一般高校を卒業した知的障害者の事例を中心として」が、あまりにも表面的だったからだ。まあ、現場にいる者の目とは、こんなものかもしれない。
一番面白かったのは、「第6章 フランス型教育モデルの変容ー民主化から新自由主義へ」で、フランスの教育の現状がコンパクトにまとめられている。 ブリュデューの考えが書いてあると言ってもいい。
私の立場は、格差社会が進んだとしても、20世紀以降の先進国においては、インセンティヴディバイドなど、どうしても納得できない。身分制社会でも階級社会でもないのに、個人の自由意志を物理的に変更できない。マインドコントロールはあるだろうが、それは物理的な強制とは全然違う。命を取るとは言っていないのだから。

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